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第18回:RAWデータの成り立ち

鹿野宏/カメラマン http://www.hellolab.com
電塾 http://www.denjuku.org/

ここでは、中判デジタルカメラの入門者向けの記事として、中判デジタルカメラとは何か? デジタル一眼などと比較してどこが優れているのか? などを具体的に解説していく。今回はRAWデータをその成り立ちから考えていきたいと思います。

●改めてRAWデータを考える

さてRAWデータの成り立ちについて考えてみたいと思います。

普段私たちが使用するRAWデータとはいったいどのようなものなのでしょうか? JPEGやTIFFとはまったく異なるものなのでしょうか? JPEGやTIFFは著作権が認められていますが、RAWデータに対するはっきりしたスタンスは決まっていないようです。

でもRAWで撮影することが前提の中判デジタルカメラの世界において、「RAWデータに対して著作権が認められない」ということになってしまっては、ちょっと困ったことのように感じられます。

そして、RAWデータは、撮影時のどんなミスでもカバーしてくれるのでしょうか? またどのようにも仕上げることが本当に可能なのでしょうか?

このようなことを考えるためには、RAWデータが何かを知らなくてはならないでしょう。筆者は、画学生時代に「RAW Canvas」という英語に初めて触れました。これは「地塗りがされていない平織りの麻布」の意味です。

研究社の新英和中辞典によると、

1(食べ物が)生(なま)の.料理してない. 用例 Raw meat 生肉。

2【限定用法の形容詞】
a〈ものが〉原料のままの,未加工の,精製してない
《★【類語】 crude は原料などが粗製のままの》.
  用例 raw silk 生糸.
b〈皮が〉なめしてない.
  用例 ⇒rawhide.
c〈酒が〉水割りでない.
  用例 raw spirit(s) 生(き)一本.
d〈フィルムが〉露光してない,生の.
  用例 raw film 生フィルム.
e〈資料などが〉(未整理・未編集などで)生の.
  用例 raw data 生のデータ.

3【限定用法の形容詞】 〈人が〉経験の浅い,新米の,未熟な,不慣れの.
  用例 a raw recruit 新兵.

などとあり、どうやら「ものが、原料のままの,未加工の,精製してない」がRAWの本来の意味に当たりそうです。

 

RAWデータを解析する

RAWデータに関して、「RAWデータは現像前のイメージセンサから出力されたそのままのデータなので、RAW現像ソフトで展開する必要があり、その後はどのようにでも仕上がることが可能だ」。という解説をよく目にします。

「ものが、原料のままの,未加工の,精製してない」ということで、あれば確かにそうかもしれません。同様の疑問を持っていた筆者の友人が、なんとRAWデータを解析してくれたのです。

それは左のようなものでした。

RAWデータのテキストデータはレンズ情報、カメラ情報、撮影日などのEXIF情報、メーカーが使用するメーカーノーツなどで構成されています。このテキストデータ内には、実際に合焦させた距離も書き込まれていました。商品撮りなどではこれが表示されたら、同ピン撮影などですごく便利な情報ですよね。

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▲EXIF情報などテキストデータが並ぶRAWデータの中身(クリックで拡大)
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▲ガンマカーブを当てられる前のモノクロ画像(クリックで拡大)
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▲上のモノクロ画像を拡大(クリックで拡大)

このモノクロ画像を拡大してみると、見事にモザイク情報が反映されていました。いや…初めて拝見しました。

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  ◀RAWデータによっては、仕上がりをシミュレーションしたフルサイズのJPEGデータが格納されている場合もある(クリックで拡大)

●RAWデータの認識を改める

そこでRAWデータに関する認識はこのように再定義してみました。

「イメージセンサーから出力されたアナログデータに、そのイメージセンサーにとって具合のよいバイアスをかけ、時にはシャドウやハイライトの情報をドライブしたものをデジタルデータに変換したモノクロ画像」。

「マトリックスの情報に適用するべきガンマカーブ、EXIF情報、メーカーノーツ、コンポジット情報などのテキストデータ」。

「仕上がりを想定したプレビュー(場合によってはフルサイズのものもある)」。

あらためて考え直してみるとRAWデータとは、「イメージセンサーから取り出されたデータをそのままAD変換するのではなく、そのメーカー(あるいはイメージセンサー)にとって必要な情報を付加されて記録されている、マトリックス越しに撮影されたモノクロ画像とマトリックス情報とガンマカーブ」であり、そして撮影情報の中には「このように仕上げたい」「このカラープロファイルで撮影された」、メーカーによってはカラーのフルサイズのJPEGデータなどの情報が格納されているのです。

私は先ほどのモザイク模様のモノクロ画像を初めて見ました。メーカーにより、中にはハイライトまでものすごく伸びのあるデータが生成される場合もあれば、シャドウ側にそれを持つものもあります。

中判デジタルカメラの場合はこの作業が少なく、全体に広い情報を記録しているようです、うーん! 改めてRAWデータは確かに素材生が高く、ダイナミックレンジが広く、色調変換にもかなりの耐性を持ってはいますが、「どのカメラで」「どんな露出で」「レンズはこれで」「どのような方向性を持って」撮影されたのかが記録されているのですね。

●RAWデータにも著作権はある!?

これまで筆者も含めて「RAWデータは未現像」ファイルなので、現像ソフトで現像しましょう、と言ってきました。このたとえ方はどうやら間違えていたようです。

なぜなら、「どのように撮影されたか」をきちんと記録しているのです…その証拠にカメラの背面液晶で仕上がりを確認していますよね? 未現像ではなく画像としてのすべての情報を格納した状態で、それらの細かいところが未調整なだけなのです。

記録されたモノクロ画像には結局、撮影時のシャッターチャンスやアングル、被写体の選択やライトの角度、そしてホワイトバランスや撮影時の露出までいろんな情報が詰まっているのです。そしてやはり適正露出は1つです。ただしRAWデータの場合はダイナミックレンジが広いためかなりの幅の調整が効きます。

でも極端に偏った露光をかけた場合は、RAWデータといえどもそれを救うことは不可能なのです。RAWデータはけっして「魔法のデータ」ではなく「広いグラデーション情報を持った現実的なデータ」だと認識するのが一番まっとうな気がしてきました。

ですのでRAWデータは、現像されるものではなく「微調整するためのデータ」が基本で、その画像に大きなドライブをかけることも可能だ、と認識し直したいと思います。

JPEGもTIFFも容易に改ざんでき、圧縮、非圧縮も可能で、これらはコンテナ形式のファイルです。RAWデータも、単純に(それらよりもより可塑性が高いが)同列のファイルだといえるのではないでしょうか?

「RAWデータ」に著作権があるのかという論争に1つの解を出したいと思います。
著作権が発生するためには「写真表現の確定、固定が必要条件」と言われますが、RAWデータは十分にその条件を満たしているといえるでしょう。もしRAWデータに著作権がないなら、JPEGもTIFFにもあり得ません。

RAWで撮影しているカメラマンにとっても、一人歩きしてしまったRAWデータに「著作権がない」なんて言われたくないですよね。


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