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富田眞光/写真家

2014年7月26日(土)、東京・四谷のスタジオD21でセミナー「Try out Phase One/ MamiyaLeaf in スタジオD21」が開催された。湯浅立志氏が講師となって、中判デジタルによるテザー撮影、アオリ撮影、ワークフローなどの最新のセミナーが行われたが、ここでは当セミナー最後に行われた湯浅氏とヤギシタヨシカズ氏によるトークセッション「なぜ中判デジタルを使用するのか?」の模様をお伝えする。司会進行役はPhese Oneの下田貴之氏。
▲左から湯浅氏、ヤギシタ氏、下田氏

●現在の使用機種

下田まず、現在お2人が使っている機材、今まで購入されたデジタルバックなどからお話いただけますか、湯浅さんからお願いします。

湯浅:僕は物撮りがメインのカメラマンですが、ヤギシタさんはモデル撮影100%、しかも女の子ばかり撮るカメラマンです。対照的な2人が中判デジタルをどう見ているのか、ちょっと面白いかなと思います。ちなみに僕はPhase Oneの「IQ280」を最近使っています。

ヤギシタ:僕はLeafの「Aptus75」です。

湯浅:ヤギシタさんはいつからLeafを使い始めましたか?

ヤギシタ:2011年の3月11日です。契約した1時間後ぐらいに大震災が起きたんです。それで銀一からうちまで歩いて帰ったことをよく覚えています。

湯浅:中判デジタルに至るカメラ歴を少し振り返りますと、僕はフィルムの時代はキヤノンユーザーでした。デジタルはニコンのD1が出たときにD1を買って、D1の後はD2Xまでニコンでした。当時まだデジタルとフィルムが混在していたので、フィルムはキヤノンで撮っていました。それ後、1Dsが出たのでデジタルもキヤノンに戻って、それからはずっとキヤノン。2年前にD800が出たので、またニコンも使い始めて…キヤノンもニコンもレンズを多少持っているので、どちらでも撮りますね。

バックタイプは、最初に買ったのがPhase OneのH25ハッセルVマウントでした。今はバックタイプの後ろに液晶がついていると思うのですけど、液晶がないものがかつてあったんです。ですから撮影はパソコンにつなぐことが必須で、撮った画像をパソコンで確認しながらでした。中判デジタルはその時代からのユーザーです。

その後にPhase OneのP25+、その次はP45+、LeafのAptus-II 8(Mamiya DM28 645DF+カメラキット)を1台買い足して、それで今年、P45+をIQ280に買い直しました。現在使っているバックタイプは、LeafのAptus-II 8とIQ280の2つです。

下田:H25というお話がありましたが、そうなると、バックタイプに関してはもう10年近いユーザーですね。

湯浅:そうですね。10年近いかもしれないです。

下田:ヤギシタさんはLeafを購入されたんですね。

ヤギシタ:僕はまずリファービッシュから入りました。

湯浅:僕も最初H25を買ったのはリファービッシュでした。

下田:リファービッシュというのは、メーカーの再生中古品という形で、点検をして販売している中古品になります。通常の製品とリファービッシュという購入しやすいタイプをご用意していますので、これから導入される方は両面でご検討いただければと思います。

湯浅:要は、新品が買えなかったというだけなんだよね(笑)。

ヤギシタ:僕も最初から新品というのは、ちょっと恐いかなと思って。でも、湯浅さん、IQ280は新品ですよね?

湯浅:IQ280は新品です。その話はおいおいするとして、H25はいくらだったんだろう? 100万円台だったかな。その後に買ったP25+もリファービッシュで買いました。新品で買うとどうしても300万円とかいっちゃうんで。

ヤギシタ:僕はLeafは645DFボディと80ミリ標準セットで買いました。モニタ、ストロボなども一緒に。Aptus75に加え、シュナイダーの150ミリも発売前に一緒に契約したんですけど、ストロボ、モニタなどを除いたカメラ関係だけで200万円前後でした。シュナイダーの150ミリは非常にシャープで気に入っています。

湯浅:ヤギシタさん、150ミリはハッセルも持っていましたよね? そういえば、Phase Oneの645ボディに、敷居を下げるという意味でハッセルのレンズも使えますよというレンズアダプタがありましたが、今でも出ていますか。

下田:はい、今も付いています(注:Value Addedのみ)。

湯浅:僕もそれを込みで買いました。というのは、僕は当時、ハッセル500CMを使っていたので。

下田:ハッセルを使っていた世代ですね。

湯浅:ハッセルのレンズアダプタというのはまたすごくて、当然ピントはマニュアルだし、絞りもまたプリセット絞りになって…。ヤギシタさんはそれでモデル撮りをしていたという(笑)。

ヤギシタ:絞りを設定して、絞り込みレバーを押さないと実際に撮る絞りまで絞ってくれないので、ピントを合わせるときは開けておいて、半押ししながらフォーカス合わせて、フォーカスエイドがビビっと言ったらそこで止めて、絞り込んでシャッターを切るということをずっとモデル撮影でやっていました(笑)。

湯浅:それを聞いて、驚愕しましたね。

●中判デジタル購入のきっかけ

下田:実際に中判デジタルを買おうと思ったきっかけ、導入しようと思ったきっかけはなんですか。

湯浅:僕は4×5でも撮影していたので、デジタルバックは使ってみたかったですね。それはポルシェに乗ってみたいのと同じ感覚です。だけど、レンタルすると高いじゃないですか。今でも1日4〜5万円は掛かります。言ってみれば、1日4万円は払えないんだけど、100万円のデジタルバックは買えるんですよ。そういうことで、4万円でレンタルすると、4万円でレンタルした分の元を取りたくなるのですね、プロカメラマンって。今日の仕事が10万円のときは4万円自腹で払ってもいいやと思えるのかもしれないけど、4〜5万円の仕事で4万円のレンタル代は払えない。

そうすると結局、僕はそんな大した仕事をしていないので、一生デジタルバック使えないじゃんということで、それなら1回買ってみてもいいかと思って買ったのがPhase OneのHシステムでした。

下田:ヤギシタさんの場合はいかがですか?

ヤギシタ:僕も6〜7割方、道楽ですよね。使ってみたいという。意味合いをつけるとするなら、広告を撮るんだったら中判デジタルは当たり前でしょうし、実際、プロの皆さんは、今まで中判のフィルムカメラを使っていたときと同じような感覚でPhase Oneを使えると思うんです。なので中判デジタルを普段から使い慣れていないと、クライアントに対する説得力、アピールが弱いかなと思いまして(笑)。
実際、「中判デジタル使っているよね?」という話で、結構メジャーな企業の広告の撮影が入ったりしたこともあったので、そういった撮影料の高い仕事を取るために中判デジタルは必要かもしれません。

湯浅:僕たち、40〜50代のカメラマンに伝説のように言われていたのは、篠山紀信さんは売り込みの時にローライを提げて行ったとか…高いカメラを持っているということは、イコールいい仕事をしているカメラマンであるみたいな。そんな伝説はとうの昔に崩れ去っているんですけど、僕たちの世代はそういう刷り込みがあるのかもしれないです。

●Phese One、Leaf、それぞれの選択理由

下田:なるほど、ではお2人がPhase One、Leafをそれぞれ選ばれたポイントは何ですか。

湯浅:僕は、現像ソフトにCapture Oneをずっと使っていたので、デジタルに関しては、Capture Oneありきの仕事をしたいと思ったのですね。そうなると選択肢からハッセルブラッドのデジタルバックは消えるじゃないですか。だから、必然的にPhase Oneになったわけですね。

ハッセルブラッドのソフト、Phocusも何度かデモ機で使ってみましたが、Capture Oneは圧倒的に使いやすい。当時のバージョン2、3あたりから今の形になっていましたし、Lightroomなどがインターフェイスを真似してきたというのも、いかにCapture Oneというソフトが先進的だったかということですよね。そういう流れからPhase Oneしか選択肢はなかったです。

下田:ヤギシタさんがLeafを選んだ理由はなんでしょう?

ヤギシタ:Leafのほうが柔らかくて、色もPhase Oneがちょっと黄色くて、Leafはちょっとマゼンタになっていて、そこら辺のトーンがLeafのほうが好みなのでLeafを選びました。

下田:他社のデジタルバックという選択肢はなかったのですか。

ヤギシタ:あまり迷わなかったです。湯浅さんの紹介というのもあったというのもあります。

湯浅:やはり皆さん買おうかどうしようか迷うし、当然高いし、僕も今回IQ280を買うに当たって、ほとんど眠れない状況で結構悩んでました。IQ280は猛烈に高いですから。

下田:一番上のクラスなので。

湯浅:実際仕事でなかなかIQ280のスペックはいらないし。それどころか従来のPシリーズで十分です。その中でIQ280を選ぶというのは、普通の商業カメラマンではなかなかないと思うんです。

下田:我々もよく言われるのは、例えば8,000万画素とかになると、実際にその画素数が必要な仕事はそれほどない。だったらもっと小さいのでいいじゃないかという話もあります。あえて8,000万画素を使おうと思った理由は何でしょう?

湯浅:何ですかね(笑)。僕の歳くらいになると、体力の限界を感じ始めるんですよ。2年ぐらい前に女房と一緒にアンコールワットに行ったんです。完全にプライベートで行ったんですけど、当時、僕はP45+しか持っていなかったので、そのときにPhase OneのIQ160をお借りしたのです。せっかく行くのだから、バックタイプで遺跡とか撮ったら面白いなと思って、IQ160を持ってアンコールワットを撮りました。

遺跡の中というのは基本100%歩くしか移動手段がありません。そのとき、重い機材を持って1日歩けるだけの体力というのはあと何年あるんだろう、こういう撮影ももうできないのかもしれないなと、ちょっと思ったんですね。

まだあと5年、ひょっとすると10年ぐらいは大丈夫かもしれないので、その間に使ってみたいカメラは使おうと思いました。70歳になってお金があるからと言ってIQ280買っても、撮れるものも限られますから。

ですから僕は、カメラマンの方はできれば40代までにバックタイプを買って欲しいなと思います。30代でバックタイプを買うのはなかなか難しい。40過ぎれば多少余裕もあるかもしれないので、そこでバックタイプを買っていただいて、そうすれば楽しめる時間はすごく長いので、十分経験していただいてから、死んでいってほしいなと(笑)。

車好きがポルシェ乗らずに死ねるかどうかというのと似たような話ですよね。夢に終わらせず、知ってから死にたい。その方が幸せかなと思う。僕がIQ280を買ったというのは、そういうことなのですね。

下田:なるほど。

湯浅:それと、最近フリーのカメラマンさんといろいろ話したりするのだけど、この年齢になると、仕事以外の写真を撮っているかどうかというのが、非常に気になるのです。僕はそういう写真は撮る必要もないかなとずっと思ってきた人間だったので、作品と言っても大した作品がほとんどないような状況で今まで何とかふらふらと生きてきたんですけど、あと何年も生きられないと考えると、そういう好きな写真も撮っておきたいなと思いはじめていて、最近は風景なども撮りに行ったりしています。


▲湯浅氏のIQ280による作例「クイーンエリザベス」
(クリックで元画像にリンク)



▲湯浅氏のIQ280による作例「神社」
(クリックで元画像にリンク)

▲湯浅氏のIQ280による作例「棚田」
(クリックで元画像にリンク)


先日、3月にクイーンエリザベスが横浜に来ていて、ちょうどIQ280が届いたその週だったんですよ。だから、早速IQ280でクイーンエリザベスを撮りに行きました。乗船している人々は動いているから当然ブレてしまっているけど、窓の欄干とかそういうのも全部見えるという、ここまでの解像感があるカメラというのはないですね。本当にすさまじい解像感だなとそのときに思いました。

これは日本の神社を撮っている写真。これもIQ280で撮っているのです。参道がものすごく長いところなんですけど、そこの参道から向こうの神社まで、こういうふうにものすごく写ってしまうということが撮れる。これが必要かどうかと言うと別なんですけど。

これは棚田を撮りに行ったときのものですね。おばあちゃんまでちゃんと見られるとかね。ブレていますけど。

海外旅行なども、特別な理由がない限り、同じ場所に何度も行くことはあまりないと思います。ということで、一期一会なのですね。だから、せっかく行くときに、しょぼいカメラで撮影してしまっていいのかなとか、もう二度とそこに行かないなと思うと、できるだけいい状況でいい写真を撮りたいなというふうに、ちょっとそのときから思うようになったのです。


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