●PCJ Interview
・File12 飯田かずな
・File11 河合俊哉
・File10 酒匂オサム
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・File03 奥本昭久
・File02 常盤響
・File01 辻佐織

●Company File
・File08 アドビ システムズ
・File07 富士フイルム
・File06 駒村商会
・File05 ジナー
・File04 ハッセルブラッド
・File03 シグマ
・File02 フェーズワン
・File01 ライカ

●Overseas Photographers
File09 Josh Madson
・File08 Michael Kenna
・File07 Todd McLellan
・File06 Mona Kuhn
・File05 Diana Scheunemann
・File04 Albert Watson
・File03 Nick Meek
・File02 Rankin
・File01 Ron van Dongen
富士フイルムは、カメラメーカーとしては6×8などの中判カメラをスタジオを中心に展開し、一方で、誰にでも使えるコンシューマ機にも注力してきた。いわゆる一眼レフカメラ市場に対してはフィルムメーカーとしての顔の方がプロカメラマンには馴染みがあるだろう。その富士フイルムが2011年より「Xシリーズ」を開発し、競合ひしめくメインストリームに投入してきた。フィルムメーカーとしての強みを最新スペックのハードウェアにまとめたデジタルカメラ「Xシリーズ」を軸に、富士フイルムの現在の戦略を富士フイルム電子映像事業部の上野隆氏に聞いた。

富士フイルム
http://fujifilm.jp/

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▲話を聞いた富士フイルム株式会社電子映像事業部商品部担当課長の上野隆氏

▲富士フイルムのカメラ各種。前列がXシリーズ




●富士フイルムのカメラ戦略

−−上野さんは最新のデジタルカメラ「Xシリーズ」の企画ご担当とのことですが、この部署は長いのでしょうか。

上野:私は富士フイルムのプロ向けの写真部門に、1996年から2009年まで所属していました。当時はまだフィルム全盛でしたので、プロ写真家のサポートをしたり、ハイエンドのアマチュアの皆様にリバーサルフィルムで写真を撮る楽しさを伝えるため、毎週のように写真教室や撮影会を全国で開催したりする仕事に従事していました。

その後もフィルムやハイエンドのフィルムカメラの販売促進などを手がけていたのですが、2011年春に発売した「X100」を開発する際に、意見を聞かせて欲しいという話になって、開発アドバイザーの1人として関わりました。私は社内でも無類のカメラ好きと思われていましたので。そして「X-Pro1」でいよいよレンズ交換式カメラを開発することになり、正式に担当することになりました。現在はフィルム半分、デジタル半分ということで兼務させていただき、名刺が2つあるんです(笑)。

−−それはお忙しいですね(笑)。

上野:プロにとっては、フィルムかデジタルかというのは手段の1つでしかなくて、目指すところは一緒だと思ってますので、そういう観点から両方やらせてもらっています。

−−富士フイルムのフィルムカメラの現状から伺います。もともと6×8、6×9のカメラは特に写真館などで、かなりのシェアを持っていらっしゃったと思います。その市場の推移や現状をお話いただけますか。

上野:もともと富士フイルムのカメラはコンパクトから大判まで、すべてのジャンルを網羅していました。レンズも古くはライカLマウント規格のフジノンレンズをラインナップするなど、積極的に展開していました。カメラ本体では、簡単に撮れて幅広い層の方に使っていただける「フジペット」を含め、最終的には35㎜一眼レフも商品化していましたし、中判、大判も手がけてきました。1980年代の後半からは、基本的に一眼レフは止めて、35mmは民生用のコンパクトに特化しました。

一方でプロが使う機材としては中判カメラに特化し、おかげさまで営業写真館さんやコマーシャルの世界で利用されてきました。スタジオにおいては蛇腹のモータードライブカメラ「GX680」が非常に好評で、特にブローニーで撮影している写真館などでは、GX680かマミヤさんのRZを使われているところが多かったと思います。

また、大判レンズのフジノンが良かったものですから、富士フイルムの中・大判は画質がいいという評価をいただいています。写真のデジタル化が始まった当初でも、肌色の再現性などはまだまだフィルムの方が遥かに上だったということもあって、GX680の出荷は特に下がらなかったです。

一方、撮影画像をすぐお客様にプレゼンできるなど、デジタルカメラのメリットが写真館やコマーシャルの世界で重視されるようにもなってきて、徐々にデジタルカメラの普及が始まりました。プリントや色作りなどもどんどんフィルムに追いついてきて、もちろん一部の大手さんはいまだにフィルムにこだわって撮っていらっしゃるところもありますのでゼロではないんですけど、営業写真館さんの多くはデジタルカメラ中心のシステムに移行したと言うのが現状です。

−−その過渡期に、中判フィルムに変わるデジタルカメラを開発しようとは思わなかったんですか。

上野:中判デジタルは、GX680に装着する「DBP」というデジタルバックを作りました。これは当時で2,000万画素ぐらいでしたけど、なにせ元が6×8のカメラですから。6×8のセンサーは当時作ったらとんでもない値段になってしまうので、6×4のサイズぐらいだったんです。そのため、光学系的には焦点距離が長くなってしまうという点はありました。

−−一方でフジノンのレンズはハッセルのシステムに組み込まれましたが、そのあたりの流れはどうでしょうか。


上野:ハッセルと「GX645」というカメラを共同開発したときに、ハッセルは「H1」という名前で新しいHシリーズを作りました。ハッセル=カールツァイスというイメージが強かったのですが、あのときにハッセルがフジノンを非常に認めてくださいまして、それ以来パートナーとなっています。

−−結果的に富士フイルムとしては、中判デジタルカメラは見送られたわけですね。

上野:「GX645」のとき、デジタルバックも一応検討したと聞いてますが、DBPの状況を見ていてもすでにフェーズワンやイマコン、ジナーなど競合するメーカーがいろいろありました。そこに後発で富士フイルムが出ていっても、もともと市場自体は小さいですし、単価も数100万円と高い。さらに現像ソフトから何からシステムすべてを持つとなると、ビジネスベースに乗せるのはかなり厳しいかなという判断が当時あったと思います。

例えば、営業写真館では6切サイズ位のプリントが一般的です。であれば、民生用のデジタル一眼でも十分という認識になってきました。今でもおそらく営業写真館のカメラで、4,000万画素以上のデジタルバックをお使いのところはほとんどないと思います。4,000万画素以上はむしろコマーシャルに要求される画質ですから。

−−そういえば富士フイルムは、銀塩の一眼レフカメラ、デジタル一眼ともに本格参入していませんが、それはニコン、キヤノンが出てきたからということですか。


上野:富士フイルムが一眼レフから撤退したのは1980年代の冒頭ぐらいだったと思うんですけど、当時からニコン、キヤノンの二強は今と変わらず強かったですし、さらにミノルタ、ペンタックス、オリンパスなどが競っている状況でした。富士フイルムとしては、当社の強みが最も活かせるジャンルがやはり中判、大判でしたので、その高画質な世界に特化していきました。

一方で、誰でも失敗のない写真を、しかもきれいに撮っていただけるという意味ではコンパクトカメラの世界で当社はかなりシェアを持っていました。それはデジタルカメラに移行してもFinePixなどでその得意分野を引き継いでいます。

−−確かに富士フイルムは、一番上と一番下を狙っていて、真ん中が抜けている印象でした。その真ん中を今回「Xシリーズ」で、攻めてきた印象を持ちました。





▲ブローニーで撮影している写真館などで活躍していた蛇腹のモータードライブカメラ「GX680」


▲6×6、6×7の切り替え可能なフイルムカメラ「GF670 Professional」
(クリックで拡大)。



▲ハッセルブラッドと共同開発された中判デジタルカメラ「GF645AF」。Hシリーズと同等
(クリックで拡大)。

▲特に肌色や階調再現に強みを持っていた富士フイルムのデジタル一眼「S5Pro」
(クリックで拡大)。


●Xシリーズ投入の背景

−−デジタルカメラが普及し始めて10年以上が経ち、独自のセンサーを持ったFinePixシリーズがコンシューマ市場ではかなり普及していると思いますが、今回「Xシリーズ」を投入された背景にはどういったことがありますか。

上野:当社はデジタルカメラにおいてはコンパクトカメラ中心で展開してきて、デジタル一眼に関してはニコンさんから一眼レフボディを買い、FinePixの「S1 Pro」から始まって「S2」「S3」「S5」まで4機種をニコンボディで販売してきました。今でも営業写真館さんで当社のS5を使い続けていただいているところは多いと思います。

当社のデジタル一眼は、富士フイルムが長年培ってきた色作りにポイントがあります。フィルムであろうとデジタルであろうと、最終的にレンズを通した光を映像化してプリントするということについてはなんら変わらないので、そこの色作りというポイントで当社はかなりアドバンテージを持っていると思っています。特に営業写真館がこだわる肌色や階調再現に強みを持っていましたし、S5はそういった意味でも高評価でした。今でも肌色を撮るときはS5を使っているんですというプロ写真家の方も多いですね。

そういう中で、「S6」の待望論がありました。やはり色作りにおいて、富士フイルムがいいと言っていただける特にプロ、ハイアマチュアの方がいらっしゃった。そこにお応えするカメラを我々は用意する必要があるんじゃないかというのが、そもそものXシリーズ開発の理由の1つですね。

−−富士フイルムらしいフィルムの色味をデジタルに、ということですか。

上野:そうですね。実際Xシリーズの画像設計をしているのはフィルムを作っていた人間たちですから、色の原理も知り尽くしているんですね。どう見えたら青空はきれいな青空なのか。どういう階調再現をしたら、例えば球体は円ではなく球として3次元に見えるのか。そういったことをフィルム時代から当社はずっと研究しているわけです。そこの微妙なグラデーションで立体感のあるなしが決まってきます。その色設計とはどういうものか、階調設計とはどういうものかという膨大なデータを持っていますから、それを画像処理、画像設計に生かす。そうすると、デジタルで撮っているんだけど色再現や立体感、質感の再現が非常に良くなる。そこが評価していただいてる部分として非常に大きいです。

−−いわゆるデジタルカメラの画像処理エンジンのことですね。

上野:そうです。だから極論すると、ボディは他社から買ってきても構わないというか、自分でボディを作ってもいいんですけど、結局勝負は画質だろうと。富士フイルムはやっぱり画質オタク、画質番長的なところがあって、中判、大判を選択したということからもそうなんですけど、画質では負けないという自負はありますので、そこですね。

以前より富士フイルムのコンパクトデジカメは、色はどのデジタル一眼よりもいいと言ってくださるプロの方が実際に本当にいっぱいいらっしゃるんです。だけどプロの方は、コンパクトデジカメで仕事をするわけにいかないから、この色を持った仕事に使えるカメラの発売を富士フイルムに期待していただいていました。S5も良いカメラでしたが、さすがに現代のレベルだと画素数がちょっと足りない。だから今の時代に相応しい解像力を持ったカメラが欲しいと言われていたんです。

そういう意見がだいぶ溜まっていたのが今から3年ぐらい前でしょうか。そこでカメラらしい魅力を持ったカメラを作ること、プロのニーズに応えられる、今の当社の持っている色再現にふさわしい、仕事で使うのにふさわしいボディを作ることが必要ということで、後のXシリーズとなるハイエンドラインの企画が始まりました。

−−そのとき、他社の動向はご覧になっていたんですか。例えば、マイクロフォーサーズが出てきたとか。

上野:ええ、見ていました。もちろんマイクロフォーサーズもありましたし、フルサイズ機も一般化して、いろいろなカメラが揃ってきた時期だと思います。ただ我々としては特にレンズ交換のタイプのセンサーサイズにおいては、マイクロフォーサーズは選択肢にはなかったです。プロユースを前提とした場合、最低でもAPS-Cだと思っていました。もちろんフルサイズも視野に入れていましたが。

−−ということは、ライバルとしては5D辺りのデジタル一眼を見ていたんですか。

上野:はい。まだ当時はMark IIではなかったかもしれないですけど、5DやニコンであればD700、あの辺の20万円台クラスのプロも使える高級一眼レフですね。もっと上をいくと1Ds Mark II、Mark Ⅲ、Mark Ⅳとか、ニコンだとD3Xですか。そこは50万とか80万の世界なのでまたちょっと違いますけど、その下の20、30万円の主力ラインですよね。プロの方の多くが5D Mark Ⅱなどを使われていることは知っていましたし。

−−そうですね。

上野:今は1Dsとか1Dを使わなければいけない人は限られているので、ほとんどの方は5Dで十分。であれば、ミラーレス一眼の「X-Pro 1」は、そのプロのメインストリームを一眼レフとは違ったアプローチで真っ向から狙いにいこうというところですね。

それ以外にも、我々はコンパクトをずっとやってきていますので、真の高級コンパクトも企画しました。レンズの外れないコンパクト系ラインで単焦点の「X100」、ズームの「X10」がそうです。それから特にアメリカをはじめとする海外で根強い人気の26倍ロングズーム機「X-S1」と、計4つの「X」シリーズを作りました。大きく分けると、コンパクト、レンズ交換、ロングズームという3つのラインでやろうと。これは先ほどの企画段階から最初にありました。

−−ちなみにロングズームの「X-S1」は、レンズ交換式ではないんですね。

上野:違います。これは1本で24〜624mmまでいけます。それこそ海外旅行とか風景などはこれ1台で何でも撮れてしまうと。

−−リリースは「X100」が一番先で次に「X10」、そして「X-S1」、「X-Pro1」の順ですね。

上野:我々も順番を踏んだほうがいいだろうということで、まずは約1年前にレンズ交換のできない単焦点タイプの高級コンパクトカメラ「X100」を発売しました。フィルム時代はコンタックスとかミノルタとかリコーとかで高級コンパクトがいっぱいあったと思うんですけど、デジタルになってそういうジャンルは今ひとつうまく確立していないと思ったんです。

−−なるほど。X100は単焦点の広角レンズ搭載ですね。

上野:はい、35mm相当です。それと4倍ズームを搭載した「X10」。我々はこの2台の高級コンパクトカメラの提案で一石投じようと思いました。同時に「X-Pro1」の開発もスタートしていたのですが。

−−X-Pro1はレンズ交換式のミラーレス一眼ですね。

上野:まずX100を出して、我々の方向性が間違っていないかなど市場に受け入れられるかも見つつ、最終的にX-Pro1を仕上げていこうと。このような順番で出しました。


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